宮本昌幸の撮影日誌

北海道在住(芽室町)の写真家 宮本昌幸の活動情報や日々の雑感を掲載しております。

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フィールドにて


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ハクガンという国内では珍しい鳥を撮影していました。
彼らが降り立った畑にはオオハクチョウもたくさん舞い降り、落穂をせっせと食べては時々隣人同士で争っていました。
その中に親2羽、仔1羽の家族と思われるハクチョウがいました。仔の方は地面にうずくまり時々羽をバタつかせる姿をみせつつも
特に立ち上がって移動する仕草がありませんが、
2羽の親はせっせと落穂拾いをしています。
次第に辺りの明るさがなくなってくると、周りにいた多くのハクチョウ達は畑の地面を蹴り上げて力強く助走をかけ、
1羽また1羽、そして家族単位やそれらが集まって多くのグループとなり空へと舞い上がっていきます。
別の採草地や比較的安全に夜を過ごせるねぐらへと向かうのです。ハクチョウのような大きな鳥は
助走をかけないと空へはなかなか舞い上がれません。近くにいた例の3羽の家族もそれにならって移動をしたい様子でした。
ハクチョウは飛び立つ時に独特の声を出し、首を縦に振ってお互いの意思疎通を行います。
しかし座り込んだ仔は声を出し首を振るものの立ち上がろうとしません。いや、出来ないようでした。
両翼を支えにして立ち上がろうとして見えた片方の足先は、全く力が入らずダランと垂れて自分の体を支えることが出来なかったのです。
親の2羽はそれでも声の掛け合いを繰り返し、そしてついに勢いよく助走を始めました。
5mほど加速した時、仔もそれにならって必死に羽をバタつかせますが、
しかしやはり身体を浮き上がらせることはできずすぐ地面へと座り込んでしまいました。
それを確認した瞬間、親鳥2羽は急ブレーキをかけ飛び立つのやめ、また声を上げながら仔の周りへと戻ってきました。
それから時間を置きながら3度ほど同じことを繰り返しました。ですが仔は飛び立つことが出来ません。
親は常に声をかけその場を離れようとはしません。
こちらも時期的に鳥インフルエンザという蔓延すれば多くの被害をもたらす病原体の保持の可能性もあることを考慮し、
役場を通じて捕獲という手はずをつけました。そうこうしているうちに次第にあたりは暗くなり始めます。
再び親鳥が声をかけはじめて首を振ります。再度チャレンジするのです。
いくら体の大きいハクチョウといえど畑のど真ん中で夜を過ごせば、キツネの格好の餌食となってしまうので、
親鳥としても自分の身を守らねばなりません。より一層大きな声をあげて助走が始まりました。
仔もこれまでになく一所懸命羽を羽ばたかせ、倒れこみそうになりながらもこれまでは叶わなかった助走のような形になりました。
そして身体を浮かばせることに成功しました。
しかし、しっかりとした助走が出来ないため高度が稼げず潅木にぶつかり墜落してしまいます。
親鳥はメスと思われる1羽はすぐに真横へ着陸、オスは大きく弧を描くように一周し仔の上を通過しながら声をかけます。
そして再び羽ばたき始めた仔は空中へと舞い上がりました。
今度こそねぐらの川面へと飛翔し、やがて遠方へと見えなくなりました。
脚がダメになった幼鳥に明日が無事訪れるのかはわかりません。夜を越せたとしても、
再び川面を蹴る力があるのか、畑に降り立っても歩きながら採餌ができるのか、正直可能性は低いでしょう。
しかし、羽が折れこの地で夏を過ごさなくてはならなくなった個体がしっかりと生き抜いていることを見ることもあります。
それが云ってみれば自然の掟です。
ただ、もしあのラストチャンスのように飛び出した親鳥が、
それまでと同じように飛び立つことが出来ない自分の仔を見た時はどういう対応をしていたのでしょうか。
そのまま自分の身を危険に晒してまで畑の中で共に過ごしたのでしょうか。動物に感情はない、
そういう見方もあるでしょうし、実際フィールドにいたら圧倒的にそういう場面に出くわします。
それを追求することはもしかしたら無意味なことなのかもしれませんが、興味深いフィールドでの経験でした。

夕暮れを飛翔するオオハクチョウ/Whooper Swan
CANON EOS-5Ds,EF600mm F4L IS II USM
  1. 2015/11/06(金) 23:43:14|
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